2012年6月10日日曜日

「日本の農業(漁業)学習のねらい」5年生産業学習をどう教えるか

「小学校・社会」第9回講義(2012年6月5日)の報告です。
今回のテーマは「日本の農業(漁業)学習のねらい」5年生産業学習をどう教えるか―でした。
①実物の小麦や稲穂を教室に持ち込んでスケッチ!
兵庫県たつの市の近郊農家では、素麺と醤油の原料の「国産化率」を高めるために、「小麦」を栽培しています。
今回は、その農家に一声かけて、小麦を数株刈り取らせて頂きました。
(稲穂は、昨秋から準備していたのですが、軒先に干していて雀に食べられてしまいました。)
スケッチからの“気づき”を学生に発表してもらう。(写真1,小麦のスケッチ)
「初めて見た。」「小麦は白い粉のイメージしか無かった。」「小麦を初めてじっくりと見た。」
「意外と針のような部分がとがっていた。」「小学校の教師として知っておくべき基礎知識だ。」など,初めての小麦との出会いは“好評”でした。
②「小麦の種類」を写真で紹介した後、小麦の生産量、輸入量、自給率など、日本の小麦生産の「現状」を解説しました。
かつて日本の農村では、裏作に「小麦」を生産し、その刈り取りが終わってから稲を田植えする「二毛作」を行っていたこと、
近年、少しずつであるが「麦の自給率」を高める努力がなされていることを話しました。

②稲・藁・籾・籾殻・ぬか・玄米・白米の違いが、わかりますか?
例年なら、ここで稲穂(実物)のスケッチをして、この違いを説明します。(今回は雀の犠牲になりスライドで)
農業学習をする上で、この違いが分かることは「社会科の基礎基本」だと思うからです。
「藁」も知らないで「わらじ」づくりもないし、「ぬか」を知らずに「ぬかみそ」もなし、「玄米」を知らずに「玄米茶」もないでしょう。
以上の「小麦」と「稲穂」の実物紹介は、農業学習の講義では、学生から毎回好評です。
稲穂は、小学生時代に体験的に見ているが、「小麦」は、初体験という学生が、70~80%程度いるのです。
③「日本の農業の現状」をどう教えるのかが、この講義の課題です。
小学校の教科書では、「近代的な農法」を取り入れている典型例が紹介されており、日本の農業の実態をリアルに学べるとは言い難い内容です。
でも、その教科書や社会科資料集などを活かしながら、体験的な学習・見学学習を取り入れることにより、「日本の農業のすがた」をつかませるようにすることが大切です。
そのために、農協や農家、営農組合の協力を得ながら「農業体験=稲刈りや田植え」などを体験することが,子どもの関心を高める上でとても大切です。
そして、厳しい中でも農業に携わっている農家の人々の「労働と生産」の姿に接することで、日本の農業の“現状”に眼を向ける授業を組み立てることができる意義を説きました。
また「自給率」の現状を話し合い、一方で政府が進めようとしているTPPについても、教師として日本国民として関心と「自分の見解」を持つことの意味を強調しました。
④農業学習や漁業学習は「スーパーマーケット見学」から拡がり、深めることができる。
スーパーの野菜売り場(果物)や魚・水産物売り場の見学から、日本の農業の現状や外国との関係、漁業の現状と輸入のようす等を学ぶことができることを取り上げました。
また、その見学を活かした授業の作り方や板書のまとめ方も、実際に授業を記録したスライドを紹介しながら進めました。
5年生の社会科は、農業・工業・情報通信業・日本の地理など学習内容が多く、よほど工夫を市内と「教科書を読んでまとめた」的な学習で終わりです。
そして、現実には「知識理解」「事柄の暗記」に授業がなってしまい、日本の農業の現状と問題点、農業で働く人々や消費者の願いを理解しないままの学習に終わってしまいがちです。
たった一つの稲穂や小麦の穂、バケツ稲の田植え、そしてスーパーでの実物との出会い・・・・工夫を重ねれば楽しい生き生きとした授業が作れることを紹介しました。
大学の教室前面に提示した小麦の穂、教室が「麦畑」に変えることができました。
(写真2,教室風景)

間 森 誉 司 Mamori Takashi
和歌山大学教育学部講師(非常勤)
<URL> http://www2.117.ne.jp/~mamori/

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