2012年5月3日木曜日

「切り口論」をテーマにしながら講義を

マモさんから、大学での授業報告が入りました。



 今年度の「小学校・社会」(前期)は、履修者が96名で、昨年より約20名の増。

2011年度よりも,グレードアップして「切り口論」をテーマにしながら講義を組み立てています。

第4回の講義は、教室に「羽釜」を持ち込みました。(写真1)


そして、3/4年生「昔と今の道具」 5年生「工業の発達と私たちのくらし」の双方の視点から

授業の進め方、組み立て方や中学年と高学年の社会科や生活科との違いを解説しました。






初めに、96名(連休の谷間で、欠席者がいたので80名ぐらい)12の班それぞれに「発表順番」を決めさせました。

私は、ピンマイクをつけ、学生=5年生の子ども役のために、もう1本スタンドマイクを前に立てました。



そして、いよいよ45分・96人学級の社会科授業を開始しました。

(こんな経験は初めてでした・・・・。)

パワーポイントで、あらかじめ準備しておいた「板書計画」を、順番に“書いて”行きながら進めます。

①羽釜の実物の包みをとき、見せながら、「これは羽釜と言うんだが、何で羽釜と言うのだと思う? では、各版1番の人が前に出て、マイクで考えを言いましょう。」

「羽のような部分があるから・・・」「横に羽がでているから」「土星のような輪が回りについているからなど、様々な意見を発表。(写真2)


「この羽は、ご飯や汁が、煮えてこぼれた時に竃の炎の中に入らないためと下から薪で焚くときに,熱効率を良くするためなんだよ」と教師が補足。



②では、「羽釜はどうやってご飯を炊くんだろうね? 2番の人が発表。5年生の気持ちになるんだよ。」

このようにして、羽釜が終わったら次は「IH電気炊飯器」の写真を提示し、同じように「ご飯の炊き方」や「便利な点」「問題点」などを発表していきます。

詳しくは、写真の「板書計画」をご覧ください。(写真3)



③「羽釜」と「炊飯器」の使い方で授業を終えるのは、3年生の「昔と今の道具」の学習の目標。

せいぜい、比較の学習を入れて、昔と今を比較して話し合おうと発展するかだが・・・。







④次に「家電製品の普及率のグラフ」を提示します。そして、何が読み取れるかを学生に発表させていきます。

「冷蔵庫・洗濯機・カラーTVが,1980年代には,ほぼ100%普及している」「エアコンとパソコンは、まだ100%ではない。」などの意見。

そこで、女子学生を指名して「どうしてエアコンは100%でないの? 絶対100%にならないと思うんだけど・・・」とヒントを与えながら質問。

「北海道や山間部で、エアコンを必要としない地方があるから、日本は南北に長いから・・・・。」と、自分の考えを発表。

すかさず、あとの学生から拍手! まるで「小学校に戻ったみたいだった。」と感想カードには書かれていた。



⑤家電の普及率を確認した後は、「家電が普及して、家庭生活はどう変わったかな?」「だれが楽になっただろう?」が次の発問。

「母が祖父母が楽になった」「家事労働が軽減された」「子どもの労働も楽になった」とか「家族の団らん時間が増えた」「家族の協力が減った」

「女性の社会進出が増えた」・・・など、様々な意見が活発に出てきました。

ほぼ意見が出尽くしたところで,「実は、多くの社会科の授業は、ここで便利になったね!でしめくくって目出度しで終わる場合が多いのだよ」

本当に社会科らしい授業は、再度「学習課題に返らなければならないのです」といって次の質問を投げかけました。



⑥「本当に私たちの生活が、豊かになったと言えるでしょうか?」と。

「言える」「言えない」「どちらも」と論議させ、前に出て双方の意見を理由をつけて発表します。

ほぼ出尽くしたところへ、「先生は、連休に田舎に山菜採りに行ったら、こんな風景を見つけたよ」と言いながら

「写真・山中に廃棄された家電ごみ」を提示しました。(ネットから引用)

この1枚の写真から「環境問題」「資源問題」「無駄遣い」など「負の部分」へと目をむけていきます。

最後に,究極の選択は「福島原発事故の写真」を提示し、工業の発達」を、これまでのような、「安全神話」スタイルで教えても良いのかを考えさせ、「96人学級授業」を終えました。



学生からは、教師はコンダクターの意味がわかった  教師主導でなくて「児童主体」だった・・・など

子どもたちが発表していくだけで、自ずから学習目標が達成できていく 教師の授業で果たす役割がよく分かった・・・など

大変好評でした。

今回は本物の「羽釜」が切り口でしたが、今後の講義でも新たな発想から、学生参加の講義を組み立てていこうと考えています。




司(和歌山大学教育学部講師)

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